マロニエの色づく頃
2007年 10月 30日
本当に、ニューギニアに留学したり、国分寺の草むらで木や湧水と酒を飲んで語らっていた僕が、いまこうして銀座のビル街の中で毎日働いている。不思議だ。ここで働かなければ、商業社会は僕には縁もなく、閉ざされたものだという思い込みの中で生きて居ただろう。仕事をさせていただけてる事に素直に感謝。
ただ、この街には、ところどころ緑地は見つけるが、季節を感じとるための自然な息吹や精霊たちのリズムが聞こえてくる箇所が少ない。
僕の全身は全力で季節を探そうとする。季節を消し去ろうとするあらゆるものに、尖った一瞥をくれてやる。それでも、エアコンや造花やコンクリート達はなんにも変わらないのだが。
気を取り直して、季節の尾を追う。精霊の翼は棚引いて、尾翼はポエジーを撒き散らすから、その香りを嗅いで行けばいつでも見つかる筈なんだ。すこしくすぐったい言葉だな、「ポエジー」というのは。
みゆき通りを歩いていて、マロニエの葉が黄色いのを見つけた。
立ち止まって、空に携帯をかざし、写し撮る。
いち、にぃ、さん。
うん、「10月の終わり」を掴まえた。
どの季節も、美しい横顔と快い立ち振る舞いを用意してくれている。
かつて、日本人はその一瞬一瞬を味わい捉える事に長け、自然たちも、さらに磨きをかけた姿を人々の前に顕したという。
いま、まばらな客席と、いくつかのお決まりの舞台にだけ過剰に人が集まる現状に、自然達もすこしモチベーションを落としている。
多様な時間のホログラム。風土記をあらたに書き下ろすのは、今。私。あなた。
ありがとう、晩秋。
by toktokpng
| 2007-10-30 13:47
| 日常