「らうん」とは僕がかつて暮らしたパプアの言葉で「旅する・ぶらぶらする」という意味です。光を描く画家、八坂圭が日々を見つめ、愛し、感じた事を福岡からつづっています。


by toktokpng
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30

カテゴリ:アリエルの災難ー子供向け物語( 5 )

アリエルの災難(5)

アリエルはどうしても犬の首輪が気になった。たしかに何かカプセルがついてる。
おじさんのクルマの荷台からまだこっちを見て動かない。
「アリエル、父さんが湖に釣りにいくってー、一緒いこ~。」
となりのベンの声がした。それと同時に親子があらわれ車に乗り込む。
ばたん。

「アリエルものれよ!道具はこないだの積んだままだからさ!」
「あぁ、いくよ。うしろに変な犬がのってんだ、みないかい?」
「え~、しらないよ~、ウォリーの所のバカ犬じゃねぇ?」
ベンはすこし口が悪い。
「ううん、あの犬はもっと小さいよ。この犬は、もすこし大きいんだ、それにバカじゃないらしいよ。なんだか言伝をたまわってるみたいだし・・。」
そんなことをぶつぶついいながら、アリエルは水の入った容器と帽子をつかんでバルコニーからガレージの方へ降りていった。
「ねえ、ベン。荷台にコイツを乗せたままいく?」
「走り出したら勝手に落ちるか降りるかするんじゃねぇ?ほっときゃいいんじゃねぇ?」
「そっかな。そんな気がしないんだけど。
僕、犬と一緒に荷台にのるよ。」
「いいね!それ!父ちゃんいい?おれも一緒に乗って。」
「勝手にしなー。」
[PR]
by toktokpng | 2005-04-27 23:55 | アリエルの災難ー子供向け物語

アリエルの災難(4)

アリ達はアリエルが、ミルクだけを守って、食べ残しを自分たちに解放してくれたことを喜び、感謝して歌をもって返礼した。

「こども。少年。ジュビナイル。あなたの事をなんて呼んだらいいのか知らないが、小さなものに感謝します。
あなたの準備したもので、あなたが食べたものはない。あなたが我らにくださった、小さなもので満ち足りぬ、我らの仲間はもういない。
今日の糧に感謝を。ちぃっちゃいもの達を代表し、アリエルさんに感謝しよう。
大きく稔ったパンの実を分け与えられた喜びを表すために何をしよう。
我らのふるい親戚のミツバチたちにも伝えよう。アリエルさんのやさしさを。
ミツバチたちは同僚の蝶々たちにも話すだろう。
蝶の娘は花たちとあなたの話題をするだろう。
あなたのちいさな行いに、我らも小さく答えよう。
その小さな良いものは、やがて大きく拡がってあなたのもとに帰るだろう。
こども、少年、ジュビナイル。
アリエルさんにアリの御加護を。」
アリエルは残ったミルクをすすりながら、じっとピックアップの荷台にいる犬をみている。太陽も犬も車もそのままだ。
足元でダンスをするように朝食に群がるアリだけが賑やかだった。
[PR]
by toktokpng | 2005-04-15 11:37 | アリエルの災難ー子供向け物語

アリエルの災難(3)

アリエルは電話をおいて、犬の側へいった。きのう友達の大地といっしょに木に登り、もいできたパンの実はすっかり食べられて跡形もない。いつもは海辺のマーケットで母さんが買ってくるパンの実しか食べていないから、今日の実は特別だったのだ。
「あっちいけ、くろい犬!」
そういってアリエルは手を振りかざす。
ワンころは、笑うような口元でアリエルにかまわずヒョイとテラスの階段を駆け降りる。

そこには、となりのウォンおじさんのピックアップがとまっている。

ワンころは、その4WDの荷台で人をバカにしたように舌を出し、尻尾を振ってこちらを見ている。

首輪になにかついていて、それがキラキラ光っている。

さっきの変な電話でオトナ語の人がいってたカプセルかなあ。
アリエルは、何で電話とこの無礼な犬が関係あるのかわからなかったが、お父さんのしわざか、仕事のコトヅテだったらほっとけないなあー、と思った。

今日もこの村は強い日差しの中で朝を向かえている。
食べ散らかされた朝ゴハンには、アリが行列を作って時ならぬ大立食パーティーを始めようとしている。
「アリさん、食べてもいいけどさ、このミルクは僕に残してね」
[PR]
by toktokpng | 2005-04-13 23:55 | アリエルの災難ー子供向け物語

アリエルの災難(2)

アリエルは、12歳くらいの少年で、このひどい風の中に何かを懐かしむような目で佇んでいました。
「おじさん、どこからきたんだい」
そうやって、彼をみつけて遠巻きに見ていた僕に声をかけてくれたのは彼の方でした。僕は扉の向こうから来たこと、この風の強い荒野で寒くはないけど、もっと襟の立った大きなコートを着てくればよかったと後悔してること、扉の向こうでは僕にそっくりな7歳のおじいさんが待ってるから、そんなに長居はしてられないことなどを告げました。
「おじさんは、扉の向こうから来たっていうけど、そんな扉がどこにあるんだい? ・・・まあ、いいさ、そんなことは。
 ここは、ひどいところだろ? でもねえ、ここから始まったんだよすべてはさあ。」
アリエルはさも満足そうな遠い目で荒野を見つめ、話していました。周りには他に誰もいなかったし、他にやらなきゃいけないこともなかったので、僕はアリエルの話に耳をかたむけました。彼も僕を友達のように思ってくれて、いろんな話を聞かせてくれました。


アリエルはその日、朝ご飯に用意していた蜂蜜とパンの実(南の島に生えている、白くて大きな実がなる木の、実)を食べようと思いながら顔を洗っていました。
そこに急に電話がかかってきて、周りに家族のだれもいなかったので、アリエルが出ました。
電話をうけて、話をきいてるときに、近所の犬がテラスにあがってきて、アリエルが食べようと思って楽しみにしていたパンの実をかじっているのが見えました。
アリエルは犬に向かって怒りだしていましたが、電話のむこうの人が何やらはなしてるので、電話を切るにも切れません。
「あぁ、あのー、お父さんはいません。」
そういっても、電話の向こうの人は話をやめてくれません。なにやら、大人語で話しているのか、さっぱりチンプンカンプンなのです。
「アリエルさんでしょうか。大変恐縮なんですがぁ、弊社の取引先のお客様がですねぇ、・・・と、お会いした際にアリエル様の事をご紹介されたそうでぇ・・。なにぶん、出過ぎた・・・ぜひとも・・・・よろしかったでしょうかあ?」
もう、なにをいってるのかわけがわからず、アリエルは犬に食べられているパンの実の事が気になって、早く電話を切りたい一心でした。
「あ、あのー、お父さんもお母さんもいないので、僕はわかりません。またかけてくれませんか?」
「え、左様でしたら、その犬のですね、首輪のところにございますぅ、小さなカプセルをですねぇ、えぇ、ご覧になって、それでよろしくおねがいしますぅ。」
電話はそれで切れてしまいました。


話はつづきます・・
[PR]
by toktokpng | 2005-04-10 14:45 | アリエルの災難ー子供向け物語

アリエルの災難(1)

この話は、僕の頭の中にあった物置小屋の扉に、「この扉を開けるべからず」と書いてあったので、さっそくのところ開けてみようと思ったとこから始まります。

頭の中に物置小屋があるなんておかしい?


それくらいの事でおかしいとかいってると、この後の話はおかしすぎて怒っちゃうかもね。


とにかく、その扉を開けてみたんです。
そうすると、すごい風! 僕はバタンっと扉を閉じました。
でも、待てよ。いま、すごい風の吹く向こうに景色が見えたぞ。
扉の向こうは外なのか。しかも、すっごい広いとこだったような・・。
物置小屋の中は今はいってきた風のせいで無茶苦茶に散らかってます。
そうすると、7歳くらいの僕が出てきて(7歳なんだけど、おじいさんみたいな服装してたんですが・・)、
「ちょっと、おじさん困るんだよねえ。そこに開けるべからずって書いてあるでしょう。その扉のむこうは100年以上風がやんだ事は無いんだからね。こうやって散らかったもの片付けるの方の身になってくれよ。」
「あ、すいません。あの、散らかったものを片付けるのが面倒だから『開けるべからず』って書いてあるんですか?」
「そうだよ、他にどんな理由があるんだい」
「いや、恐ろしい怪物がいるとか、とんでもない財宝が隠されてるとか・・」
「おじさん大人の割に夢見勝ちだねぇ。物語じゃないんだから、そんなもんがこの世にあるわけは無いだろうよ。」
「そうでしょうか、あなたの様子はなんだか物語じみてるんですが・・。で、それでこの部屋を片付けさえすれば、この扉の向こうを見てきてもいいんですか?」
「かまわないけどさ、おじさん戻ってくるのいつなんだい。おじさんが自分で片付けるったって、これから何年もここで散らかったまんまの部屋を放っておくわけにはいかないからね。僕はこうみえてもきれい好きなんだ。」
「はあ、それはお見それしました。何年もっていうわけじゃないんです。ただちょっと、外の風景のなかに人影をみたような気がしたので、もうちょっと良く見たいなと思っただけなんです。」
「あんたねぇ、大地があって、太陽が輝いてて、風が吹いてりゃ、そりゃ人ぐらいいるだろうよ。そんなことが珍しいのかい? それで、その扉の向こうに行ってみたいっていうのかい? それですぐ戻ってくるつもりなんだって?
 まあいいさ。すきにしておいでよ。とにかく僕はあんたが出て行った後、この部屋を片付けたりはしないからね。なにがあっても、そこに積み重なってるわら半紙一枚片付けたりしないからね。全部自分でやるんだよ。いいね。」


小さな7歳のおじいさんの僕は、そういい終わって小屋のそとへいなくなってしまいました。


僕はもういちど、扉をそっと開けました。
すき間からすごい風が吹き込んできます。小屋の中は紙が舞い、箱が倒れ、棒が転がり、しっちゃかめっちゃかです。
おじいさんの剣幕が目に浮かびましたが、あとで片付けるさと思いなして扉の向こうへと出て行きました。


そこには本当にひろいひろい素敵な世界が広がっていました。僕はしばらくその場所をあるきまわり、一人の少年と出会いました。


これからするお話は、その少年の物語です。
少年の名前はアリエル。アリエルが風の強い荒野の中で、僕に語ってくれたお話を、僕も思い出しながら少しずつお話していきます。


それでは、今日はこのへんで。続きはまた、いつか・・。
[PR]
by toktokpng | 2005-04-10 14:45 | アリエルの災難ー子供向け物語